下部に生息する天然ホタルの紹介

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ホタル情報『なぜホタルか』

■ホタルの復活を願った理由

昭和30年代までは、下部でも全域にわたってどこでもホタルを見ることができた。
家の中までも舞い込み、夏のごく普通の風物詩であった。しかし昭和30年代後半から台風などによる自然災害、森林の伐採による山の荒廃、農薬や家庭雑排水による河川の汚濁等により、急激にその姿が消えていった。ホタルが消えるとともに人里の川に見られるハヤやヤマコ、カジカなどのごく普通な小魚類もみられなくなり、かじか蛙の声も絶え、メダカは絶滅してしまった。

生活の便利さを追及しているうちに、気がついてみたら自分たちをとりまく自然、自分たちが生活している人里そのものが質的に変貌してしまっていたのである。

昭和50年代に入る頃、町内一色(いっしき)集落にホタルが復活し散見できるようになった。集落で自主的に保存会を結成し、ホタルの保護活動が始まったのだ。その活動とは自分たちの住むまわりの自然を元に戻そうとすることであり、河道整備の終わった一色川の河床をできる限り自然の状態に保つことであった。この運動はそれから後の下部全体の保護活動のあり方を大きく示唆するものであった。「取り戻さなければならない自然とはなにか」を考えさせる大きな動機となった。

私たちはここで生活し、生きている。生きていくからには人間として思うように楽しく生き、まわりには自然がある。その自然は殺伐とした自然ではなく、心がなごむ豊な自然でなくてはならない。人間らしく楽しく生き、まわりには豊かな自然がある、それが人里であろう。

人が生きていくためには、自然に手を加えなくてはならないが、手の加え方によっては自然は元に戻らなくなってしまう。ある程度手が加えられていて、それでいて手を離すとすぐに元に戻ってしまうような環境、それが人里の自然というものである。ゆえにそこでは人間の活動と自然とは深く関わっている。手を離せば元に戻る。また手を加えれば再び人間の活動の場になる。といった可逆性を持っていることが人里の自然の必須要件といえる。

私達は、ホタルをこの可逆性の限度を示す指標動物としててとらえることとした。
心情的には淡く光る夏の夜の情緒を取り戻したいという強い願いであることは否めないが、ホタルだけを目的としたものではなく、ホタルを象徴として自分たちのまわりの自然を取り戻そうと考えたわけである。

■ホタル復活の目的

このような願いの中で、ホタル復活の目的を次の2本の柱で考えることとした。

1. 生活環境を浄化し、ホタルを復活させて、豊かな人里をつくる。そのことは本町の町是とする三愛運動の「郷土を愛する」ことを具現することになる。
そのために、ホタルの復活、保護運動の基本は「自然発生とその助長」とする。
2. 観光立町の行政目的にも沿って、観光面での付加価値をも高め、「ホタルの里」を実現する。
このことは次世代を担う子どもたちの心情を豊かにし、ふるさとづくりに大きな意義を持ち、やはり三愛運動の「郷土を愛する」の具現につながる。